品質アンカー

品質管理検定1級を保有するエンジニアのブログ

日本企業の組織体制と品質管理のミスマッチ

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日本の一般的な製造業を正業とする企業の組織体制は、一般に大企業とされる企業では、

 

品質保証部という対外的に自社製品の部材調達から製造プロセス・製品品質や要求品質を顧客に対して保証する部署の下に、

 

品質管理課という、自社製品の部材・製造プロセスの品質管理に特化したセクションを設けている企業が多いです。

 

 

もちろん大企業であればあるほど、製品群は多岐に渡り、様々な要素技術や製造技術を駆使して製品を生産していく訳であって、

 

品質管理課には、種々の要素技術や製造技術・それに付帯する設備や治工具への専門知識が必要となります。

 

 

しかし、得てしてそんな種々の技術に精通している人材なんていうのは、一朝一夕に得られる訳もなく、

 

品質管理課メンバーは、幅広い工程で発生した、様々な要因で起こる不具合に対して、品質保証部より流出原因発生原因の深い考察を要求されるのです。

 

 

品質管理課独自での発生原因の深い考察は不可能

まあ正直なところ、品質管理課に対しては十分な専門知識を得られるような座学やOJTの時間を設けていない企業が大半なので、

 

日頃、製造業務を行っていない品質管理課メンバーが、独自に発生原因の深い考察なんてできない訳です。

 

 

結局は、不具合発生部署(製造部)と連携して、現場職長レベルと協議しながら、発生原因を分析していく事になります。

 

しかし、ここで問題となるのが組織間の風通しが悪い企業では、品質管理課と製造部の連携が全く上手くいきません。

 

製造部での不具合発生ならば、品質管理課と連携して発生原因を分析するという事は、自らの失敗をさらし、分析されてしまうという事にもなります。

 

企業・組織の風土や考えが、不具合を隠蔽するのが悪で、不具合の原因を詳細に分析し、恒久的な対策を立案し、作業標準や重点品質管理項目に盛り込み、

二度と同様の不具合を流出させないようにする事が評価されるような組織風土なら品質管理課と製造部の連携も上手くいきます。

 

ですが、往々にして日本の製造現場は不具合を隠蔽する傾向にあります。これは現実です。

 

 

日本の組織風土は不具合をマイナス思考でとらえすぎる

組織が評価しないのです。不具合を出してしまったという事実を。

不具合を流出させれば頭ごなしに叱責され、評価が下がります。日本企業の評価制度は。

ですが、考えてみてください。

 

例えば完全ポカよけの治具を使用していたなら不具合は発生しません。しかし、完全ポカよけになっていない治具を使用しているから不具合が出たのです。

 

では、新規治具製作時に完全ポカよけの治具を製作する責任を負うのは製造部ではなく、生産技術部です。

 

ですが、だいたいの日本企業では、製造部が流出させた不具合の報告書に、治具が完全ポカよけとなっていないという原因を文言として盛り込むと、

「言い訳するな」「治具を生産技術部から引き受けた時点で製造部の責任だ」などと非難を受けるでしょう。

 

しかし、感情論抜きに考えると、完全ポカよけを考慮できていない治具を製作してしまった時点で、生産技術部の”不具合”なのです。

 

日本企業は間接業務や管理業務の失敗をあまりにも”不具合”として認識しなさすぎです。

 

製造現場は不具合を流出させると非難されます。しかし、管理者の運営ミスや工程管理ミス・連絡漏れなどは管理業務の”不具合”としては認識されません。

 

単なる”失敗”として認識されます。

 

大抵が部署内や関係部署から注意を受ける程度で、不具合記録として、エビデンスには残らないのです。

 

顧客や取引先に多大な迷惑を掛けてしまう可能性があるにもかかわらず。

 

結局の所、日本企業の評価制度が製造現場の不具合に関してあまりにもマイナス思考なので、製造部は不具合の隠蔽に注力し、大した要素技術を持たない間接部門である品質管理課に非協力的となり、

 

結果、連携が上手くとれないという事になります。

 

 

 

製造部内に品質特化部隊を

こうしたジレンマの解決策としては、当然不具合発生のマイナス評価以上に、発生原因や流出原因の迅速且つ的確な分析と、恒久的かつ持続可能な対策の立案をより評価する組織風土が必要で、

 

その上で、やはり製造部に品質管理に特化した部隊を設置し、その部隊のメンバー構成をベテラン・中堅・若手で構成し、

 

製造部内で徹底的に不具合の発生原因を分析し、潰します。(間違っても不具合を発生させた作業者に丸投げしてはならない)

 

そして品質管理課と製造部品質部隊が連携し、流出原因を潰していくというプロセスにする事です。

 

品質管理課には流出原因を潰すことはできても、発生原因を潰すことはできないからです。

 

多くの企業では発生原因と流出原因を一緒くたにし、品質管理課に分析させています。

 

発生原因を深堀すると、製造現場のあら探しに繋がってしまいやすいので、連携がとりにくい訳です。

 

製造部にも品質管理機能を設ける企業は昨今増えてきており、

 

不具合発生時に製造部の品質部隊と品質管理課が連携していく事が、最もスムーズに不具合分析の深堀と早期の対策の展開に繋がるでしょう。